レンタルサーバー選びでつい見落としがちな「回線速度」問題
CIX server installation – front / Tom Raftery
先日、ネット上で新サービスを立ち上げる際にレンタルサーバー、特に今回はVPSという、サーバーの管理者権限が持てるサービスを契約しました。
VPSの何がいいかというと、PHPなどのプログラムで構築したサービスの状態(エラー監視など)を詳しく把握できたり、足りないソフトウェアを自分で追加できるメリットがあります。 これは安価な共有レンタルサーバーよりも格段にサービスが構築しやすいことを意味します。
そしてそのVPSサービスを選定する作業が最も重要なのですが、一般的なプロモーションページには次のような項目を掲載して差別化を図っています。
一般的なVPSアピール項目
- 価格(初期費用、月額費用)
- CPUスペック+コア数(頭の回転の速さ)
- メモリ(多ければ多いほどアクセスユーザーを同時に受け入れられる)
- ハードディスク容量
- 選べるサーバーOSの種類
- 拡張性(CPUコア数やメモリ、ハードディスク容量など)
- サポート体制(電話、メールなど)
- サーバー操作用のコントロールパネル(ブラウザで大体のサーバー操作が行える)
いろいろなVPSサービスを検討した結果、料金も安く、CPUやメモリも十分で、WEBクリエイターには有り難いサーバー用のコントロールパネル「Plesk」が付いている「ServerQueen」のVPSサービス「QV-01」を契約。
仕様としては全く問題のないサービスだと思っていました。
見落としていたアクセス・スピード問題
ところが!実際に利用してみるととんでもなく回線速度が遅い…
詳しく調べてみると、契約したサーバーはアメリカにあり、自宅から19台ものルーター(ネットワーク上の中継点)を経由していることが判明しました。
サーバーを海外に置くメリットとして、その国のユーザーをメインユーザーにする事や、日本が災害にあってもサービスを提供し続けることができる事が挙げられます。
pingコマンドで調べてみると応答の遅さも判明。 現在契約中のサーバーが国内にあるサービスとは明らかに異なっています。
各サービスごとのping実行結果
asahi-netのBフレッツ回線からの測定
サービス名 | 場所 | 応答1 | 応答2 | 応答3 | 応答4 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|
RapidSite(国内VPS-S) | 日本 | 9ms | 9ms | 12ms | 9ms | 9ms |
ハッスルサーバー | 日本 | 27ms | 19ms | 14ms | 16ms | 19ms |
ロリポップ | 日本 | 7ms | 8ms | 8ms | 8ms | 7ms |
ヘテムル | 日本 | 14ms | 16ms | 16ms | 16ms | 15ms |
ServersMan@VPS | 日本 | 11ms | 12ms | 11ms | 11ms | 11ms |
さくらのVPS | 日本 | 18ms | 15ms | 16ms | 16ms | 16ms |
クララオンライン(Flex mini) | 日本 | 6ms | 8ms | 8ms | 7ms | 7ms |
ServerQueen(QV-01) | アメリカ | 126ms | 131ms | 147ms | 146ms | 137ms |
これはWebページだけでなく、埋め込まれている画像ファイルやCSSファイルをそれぞれダウンロード時に最低これぐらいは時間がかかることを意味します。
実際のダウンロードスピードもチェック
ただ、これだけでははっきり「回線速度が遅い」とは言い切れません。 反応速度が遅いだけで、ダウンロードが高速かもしれませんから。 あまりない例ですけどね…
ダウンロード速度も調べてみました。 簡単なHTMLページに300KBの画像を埋め込んだものをブラウザで表示させ、FireBugでプロファイリングしてみた結果がこれ。
各サービスごとのページダウンロード結果
サービス名 | HTMLページ | 画像(300KB) |
---|---|---|
ハッスルサーバー | 266ms | 515ms |
ロリポップ | 31ms | 437ms |
ヘテムル | 31ms | 453ms |
ServersMan@VPS | 344ms | 454ms |
さくらのVPS | 360ms | 484ms |
クララオンライン(Flex mini) | 31ms | 422ms |
RapidSite(国内VPS-S) | 31ms | 375ms |
GMOクラウドVPS(マイクロ) | 375ms | 250ms |
ServerQueen(QV-01) | 1,140ms | 3,980ms |
やはり海外サーバーは段違いに遅いです。 これははっきり体感速度として現れます。 まだファイル2つをダウンロードした結果ですが、実際は数十ファイルをダウンロードしますし、容量も1ページあたり500KB~1MBはありますから、ユーザーのストレスも大きくなります。
また、GMOクラウドVPSの回線速度の遅さも気になりますね。 サーバーは国内にあるのですが、転送速度が遅いため、軽量のHTMLファイルは問題ないものの、300KBの画像になると、数秒かかってしまっています。
GMOクラウドVPSは最近問題ないレベルに改善されてきました。
公開事例や体験版ではまず回線速度のチェックを
ついつい安く、CPUやメモリなどのサーバー自体のスペックを重視してサービス会社を選定しがちですが、安い裏には必ず理由があります。
その理由が回線速度にあるのであれば、CPUやメモリがどんなに強力でもユーザーに満足してもらえるサービスは構築できません。
もし、検討しているサービスと同様のサービス事例や、個人が公開しているサイト等があれば、ぜひ上記2つの方法(ping、ページ表示)だけでも良いので回線速度のチェックを行うようにしましょう。
そしてサービスに無料体験期間があるならば、なるべく利用してみてください。
みなさんもレンタルサーバーを選定する際には十分ご注意くださいね。
2012-02-08